調香師 宮下 忠芳(2013.7.)
前回の「オリエンタルの香り」についての話に次いで、今回は当協会のジェネオロジーに分類されている「シプレー(Chypre)の香り」についてお話ししましょう。
シプレー の語源
シプレータイプは、香水ではオリエンタルタイプについで残香性があり、幻想的な香りです。
「シプレー」の語源は地中海のキプロス島(=Cyprus島)です。香料植物であるサイプラスが生育してその匂いのする島とされていました。
シプレー香を調香するにはLFCが大事
調香師が「シプレー香」を調香するには、まずラベンダー、フゼアタイプの調合を勉強して、その香りの関係を会得?する訓練から始まりました。この関係を「LFC(Lavender Fougere Chypre)グループ」として調合技術を把握すると、その素材の共通性、配合理念が理解できますし、まさに同一のジェネオロジー的捉え方が出来ます。
Lavenderですが、コロンなどのラベンダーの調合は天然のラベンダーオイル100%ではありません。もちろんラベンダーが50%以上、その他ローズマリー、タイム、オークモス、ターピニルアセテート、ラブダナム、クマリン、メチルイオノン、ベルガモット、エチルワニリン、クラリーセージなどが用いられます。
シプレーはフゼアより重くて甘い印象
Fougereの香りは、ベルガモット、ラベンダーが主体で30~40%を占め、それにレモン、イオノン、ベチバー、ゼラニウム、オークモス、パチュリ、ハイドロキシシトロネラール、サンダルウッド、そして更にキャロット などのスパイスなどが配合されます。
さて本題のChypreは、概念からしてフゼアベースより重い感じの香で、ベチバー、そのケミカル、ムスク(キシロール、ケトン、アンブレット)サンダルウッド、パチュリ、オポポナックス、クマリン、ワニリン、オークモス、そしてジャスミン、オレンジフラワー、ネロリ、などフゼアよりさらに重くて甘い感じの香りです。
シプレータイプの名香
シプレータイプの代表的な香水は「CHYPRE de Coty」(1917年発売)ですが、これは25種類の天然香料のチンクチャー90%(オリス、ジャスミン、ムスク、アンバー、バニラ、バルサムなど)とハイドロキシシトロネラールとイオノンなど4種類のケミカル10%で作られた、まさに調合香料が即香水となっていることはあまり知られていません。
典型的なシプレーの有名香水はミツコ(ゲラン社 1919年)、ファム(ロシャス社 1944年)、ミスディオール(ディオール社1947年)などがあります。
サンダルウッドの木
ミツコ 香水